サガフロンティア2コミュニティサガフロ2開発者インタビュー

サガフロンティア2発売10周年記念 サガフロンティア2開発者インタビュー

「開発終盤までグスタフと偽ギュスターヴとを同一人物だと間違えてましたから。」

あそこまで語らないゲームと言うのも珍しいと思います。一周やっただけじゃ誰が誰だかわからない。

やっぱり登場人物が多いって言うのと、歴史物だったせいでしょうね。

「このグスタフって誰?」って言う人、結構います。

偽ギュスグスタフ

あーー、開発者もわかりませんでしたからね(笑)  開発終盤までグスタフと偽ギュスターヴとを同一人物だと間違えてましたから。

フロ2の世界ではなぜ女性があんなに強いんですか(笑)

そうですか?(意外そうな表情)

ラストPTを見ても、斧娘二人で女三人とも体術が使えますが、男の方はグスタフはともかくロベルトとウィルは使いづらい。 WP回復の一番高いのはディアナで、コーデリア最強って言うのは…

僕は意図してないですよ。 K津さんは作為的な能力設定を嫌うので、ざっくりと乱数を切って、 能力値のバランスのいい組み合わせになったものの中から、この数字の並びはこのキャラ、というふうに割り当てます。

こっちに回ってきたのはええと、メンタリティが強いやつ、反射神経がいいやつ、ガタイがいいやつ みたいな感じのパラメータで、その中からじゃあこのガタイのよさは腕力にこれだけ、丈夫さにこれだけ ってもう少し細かく割り振ったものを、僕の方でキャラにはめていくという感じになってました。

フロ2の場合はちょっと特殊で、いわゆる能力値というのを持ってないですよね。 そこは僕が狙ったところでもあるんだけど、能力値、例えば腕力と言うパラメータは実際内部データとしても持ってないです。 WPの最大値と回復値、あとはスキルレベルと武器の攻撃力だけで判断する、という。

あそこまで「能力値」というものがないゲームも珍しいですね。

能力値というのがあればあったで面白いけど、なくても面白く成立させたいと言う、挑戦みたいな意味もあります。

僕は女性を強くするって言うのは嫌いな方ですね。(一同驚き)  プレイヤーは男の子が多いから、やっぱり女性キャラって愛用するじゃないですか? 愛用するって事は弱くっても使ってくれるって事なんで、弱いほうが面白いんです。 だから僕は女性キャラって言うのは基本的にどっか弱めにしてるんです。

ただK津さんがそういう(女性だからこうという)作為も好きじゃなくて、 ミンストだと、クローディアやアイシャがバカ(知力低い)っていうのは最初からあったK津さんの設定です。 女性だから魔力が高いとかって言うのは一切やらないです。

パトリックは知力が高いキャラですが、そのパトリックより優秀なのがK津さん的にはネビルで、 ネビルは優秀だから一介の旅人なんかと旅したりしないんです。

(話を戻し)ということは、平等に能力を振ろうとした結果、意図せず女性が優遇されてるような錯覚を生んだと…

そうですね。 最初に能力値を均等に分けて、そこにキャラクターを当てはめるという作業をK津さんがやった時に あまり似たようなキャラが偏らないようにした結果なので、そこに強い意図は入ってないですね。

他のゲームと比べてあのゲームは、あんまりキャラクターに強い思い入れを持って作ってはいないです。 あくまでもユニットとしてしか僕らは使ってないですね。 ただちょっと贔屓しちゃったかなというのはコーデリアで、名前が好きなキャラだったので(笑)

明らかに贔屓されてますよね?コーデリアは(笑) 補正が異常にかかってる気がするんですけど。

そこにちょっと力を入れちゃったかもしれない。 前半の方にずっといてくれる、アシスト的なキャラで、性能が高くてもいいんだったら高くしとこう、みたいな。 まぁコーデリアは僕も好きなキャラです。

その点グスタフ可哀想で。武器が二つ固定とか…

グスタフは(偽ギュスターヴと混同するくらい)最後まで全然知らないキャラだったので、難しかったんですよ(笑)  最後の方になって、あわててデータ整えてたくらいだったので。

装備についてはK津さんとも話したんですけど、ギュスターヴの剣もファイアブランドも、 他人に持たせたら設定上変なので、どうしようか、まぁ両方ふさがっててもいいか…みたいに。 パラメータ自体は色々と持ってるんですけどね。

術専心のロールを持ってるのは、もともと術戦士のつもりで作ってるからですが、 ロールを割り振っていった時に余ったものをつけちゃってるということは結構あります。 グスタフみたいに正体のわからなかったキャラは、最後の方になって残ったものの中から まぁそういう血筋を引いてるから悪くないだろう、くらいでつけた感じはあります。

グスタフの頭ってなぜあんな形なのですか?

あれは絵ができてきて、うん、これで良いんじゃない…ってそんなもんですよ。 キャラ関係のデザインをやってる人が二人いて、フロ2の段階からモンスターデザインでも何でも、 ラフの段階からコンペみたいにしていたので結果的にあんな感じのが残りました。

まぁ砂糖水で固めてるなんていうのは、後付です(笑)  最初から砂糖で固めてこうなって…と考えてるわけじゃないです。 デザイン担当の子が特徴づけてキャラデザインをする子だったので、 そこでああいう髪型もインパクトがあって面白いと思ったんじゃないかな。

グスタフの中身はギュスターヴのゆかりのものというK津さんの設定だったから、そこは変更ないんだけど K津さん自身外見とかにあまり思い入れのない人ですね。 デザインとしてはもちろん、ゲームに出るものなので、意見は通すんだけど、 外見として「こうじゃなきゃ嫌だ」とかいうのはないみたいです。

普通にゲームしてたら二本の剣で十分強いんですけどね。

「世界最強の剣を二本も持ってる」というセリフは、K津さんの皮肉じゃないのかな、と思いましたけどね。(一同笑)

アイテムの名前はどなたが決めてるんですか?

基本的に僕ですね。 モンスターやアイテムの雑学的なデータベースを、僕がライフワークのようなつもりでずっと作ってるので なるべく一次史料はこれと特定できるものだけ採用すると言う形で。

ゲームのネタ本みたいなものがなかった頃から作り始めていて、今あるゲームのネタ本とは 違った切り口で作りたいなと思っているので、なるべく変な所から持ってくるようにしています。

SFの本のタイトルがそのまま残ってるのは、だいたい苦し紛れです。 なんか違ったものにしたかったけど思いつかなかった…という。 「クリス・アカラベス」なんかは狙ってます。 「アカラベス」がリチャード・ギャリオットのデビュー作(世界初のコンピューターRPG)で、 元々は指輪物語の由来なんだけど、最初に手に入るクヴェルだから「始まりのもの」というような意味合いですね。

リムストックスとブリムスラーヴスは、言語が違うだけで「時が刻まれた棒」というような意味だったと思います。 フィクションではなくて、普通に実在するものですよ。

丙子椒林剣とか、ゲームだけやってたら由来わかりませんよね。

名前があまりに変なので、K津さんなんか「あの山椒の剣」と散々言ってましたし(笑)  丙子椒林剣は、普通に言ったら聖徳太子の剣ですけど、大昔にあった「摩訶迦羅(マカカーラ:PC8801)」というゲームで、 いきなり片仮名で「ヘイシショウリンケン」って出てきてインパクトがあったから、いつか使いたいなと思ってました。

特に本筋に関係ないイベントなので、変な、わけのわからないものが転がっててもいいか、と思って 死せる賢者に持たせておきました。

没になったシナリオがあるという噂を聞いたことがあるんですが。

うん、ありますけどね。 いくつかのシナリオについては、書きかけていて、潰れちゃったのはあります。 ロム内にいくつかデータとして残ってるものはあるかもしれないです。

僕の方はあんまり詳しくないんだけど、マップ班の人の方が詳しいですね。 バットの話なんかは唯一残ったものです。 あそこはマップ担当の人に好きにやらせてる感じなので、ちょっとテイストが違っちゃってますよね。

(ここでX氏の秘蔵データが登場。画面を見て色々と話が盛り上がります。)

エッグの最終形態は、ゼノサイドがあるからどうにか面目を保ってますよね。

あれは…同じ頃にFFで、最後敵をボコるだけのバトルがあったのと似たような感じで ある意味もう余韻で、最後守りを考えずに攻撃だけを叩き込んで、ゲームにはなってるんだけどもうイベントバトル、 みたいに流すにはどうしたらいいかというので作ったバトルですね。(一同驚き「それにしては強すぎる」の声)

強くないです。だから毎回、ライフでフル回復するとゼノサイドだけでは絶対殺しに来ない(殺せないようになってる)んですよ。 それだけライフを残してあそこを迎えて下さいっていうつもりなんです。 ただ、イベントバトルだと思ったら急につまらなくなるんで、若干サービスしてある、と。

ですが、ライフを残そうとしてデッドストーンを使うとゼノサイドで、最大HPを超えるダメージを受ける…

もちろんそこは「はめ」ですよ(笑)。  デッドストーンって言うのは元々そういう、ライフを守る代わりにリスクが高いアイテムであって 全員が装備する前提では考えてなく、そのためにラストリーフなんかがあるんです。 ゼノサイドは、(熱、冷、光、電の)4属性持ちですしね。

エッグの第一形態はHPの高いやつを狙ってきますよね?

基本はそうです。 最終形態は死にそうなやつを狙ってくるとか、何だったかなぁ…あといくつか。 誰を狙うかと言う志向性は「キャラ」ではなく「技」が持ってるんですよ。

Defenceが全属性に対応していて、Magicが全く意味を持たなくなっていると思うのですが。

処理の方で間違えている可能性がありますね。 防御アップと術防御アップはわざわざナンバーが振ってあって、プログラムが用意されていますし。 Defenceは属性を固定していなかったため全部上昇し、Magicは固定してあるがDefenceが優先された、とか。

敵の行動パターンって言うのは、まだ解析されてませんね。

敵の行動パターンって言うのは、シーンのデータの方に入ってるんです。

シーンの方に、登場するモンスターの組み合わせの全パターンと、シーントレジャーと、 どんな行動を起こすかって言うのが入ってるので、ある意味モンスターの固有のデータではないんですね。 モンスターのデータではなく、シーンのマップの方のデータに添付されてるので 場所が違うからわかりづらいんだろうと思います。

あと、連携のデータも…

連携については瞬間ステータスを(先の)攻撃側が持っていて、 それに対して何が繋がるかっていうデータは別な所に入ってるので、片方だけ解析しても見つからないですね。 多分そのうち見つかるとは思いますけど。

正直言って、十年目にして良くみんな解析してるなぁ、と。

まったくですよねぇ(笑)  新しいゲームやれって感じっすよ(笑)  ここまで来たら引き下がれない、という感じなんでしょうか。 PSPの配信が始まったので、またちょっとネタにはなるのかもしれませんね。

ミンストくらいになればデータはもっと分かりやすくなっているとは思うんですけど、 フロ2の頃は「こういうことがやりたい」という結果から入っていって、作り手の方がまだこなれていないために 自分でも恥ずかしい作り方をしているものがありますね。

例えば連携のファイルでは、瞬間ステータスに対して何が繋がるかは技のナンバーをずらっと並べているだけなんですよ。 こんな作り方しちゃダメなんだけど、っていう(苦笑)

…ということは発生(連携の前側)と受付(連携の後側)の項目は違うんですね。

もちろんそうです。 瞬間ステータスは移動、硬直、あと…旋回だったかな?物理状態3つと熱、冷気、電気などの属性、 あとオマケで「わずかな隙(ちょっとした術?)に対しても連携する」(術撃?)というのもいくつかあります。 これは敵の方を優遇するために入れていると思います。 その他もあって少し複雑ですね。この辺はベントさんに渡してないから可哀想な事をしたな、と。

(連携のデータを眺めて)うわ…これは自分で書いていながら訳がわからないですね。 なんで(味方の連携の)項目に「スパイダーサーフ」が入っているのかっていうのが。こういうのもあります(笑)

本来は断滅のような強い技は連携しにくくなっています。 この「車状態に対して連携」っていうのは車断キッチン(くるまだんきっちん)の名残ですね。 車断キッチンのため特別に、車状態とかいう変なものを持っている、と。(一同笑)

ただこの設定がゲーム内で生きているかどうかはわからない、多分最後の方で潰していると思いますね。 繋がらないか、連携の切り方を変えているかしていると思います。 (編集注)この連携は可能ですが、「車断滅キッチン」になります。

槍は優遇されていますよね。スウィングの使いやすさは異常ですし、クヴェルも多いし。

槍は好きな武器なんで、強くあってもいいだろうと。 ただクヴェルは氷と獣で、出るタイミングが固まっちゃいましたね。

それに対して、斧は可哀想です。

斧は…、クヴェル無しで良いっていうのをK津さんに言われたんですよ。(一同「えー」)  一つだけ無限に使えるものをってことで、ゴールデンアクスをこそっと入れました。

攻撃技で、活殺獣神衝→活殺獣閃衝、神雷→召雷/天雷と名前が変わってるのは?

フロ2の世界観に神がいないからです。(一同驚き)  神の字は駄目という事で、技名からもはずしました。 (体験版にあった)雷神・風神も雷伯・風伯に変わっています。

もともとK津さん自身、神って言う概念がそんなに好きじゃないみたいです。 だから神そのものが出てくるって言うのは魔界塔士とロマ1(ミンスト)だけで、それ以外はあんまり出てこないですよね。 ロマ2では特に神がいるって世界ではないし、ロマ3では神ではなくて死兆星(?)みたいなのが暴れまわる世界で。

プレイヤー的には、魔界塔士の「かみはばらばらになった」の印象が強いですが…

K津さん自身はあんまりその辺、こだわりはないと思いますね。 そこまで行っちゃったプレイヤーなら、もうどうやって遊んでくれてもいいやと。

ただ、チェーンソーとか石化(※ロマ1のサルーイン)が効いちゃったのは、本来そういうつもりではなかったようです。 そこは個別対応がうまくできなかった部分で、ラスボスは簡単にはねられるつもりがはね切れてなかった、と。

その頃はほとんどK津さんが一人で作ってるようなものでしたし。 僕はロマ2から参加した時にロマ1の計算式を見せてもらって、ベースはそれで作ってるんですけど、 僕自身のゲームの原体験としては「メガテン」があって、じゃあ武器の属性と言うのを作ろうと。

あと、ロマ1では戦闘が終わった時に技を覚えるのを、ロマ2では戦闘中に覚えるようにしたい…というので、 あの電球の閃きシステムを持ち込んだりとか。 K津さんが作った計算式はすごく複雑で、それを見て「なんだ、ここまでやっていいのか」と思って調子に乗りましたね(笑)

フロ2って、補助術が比較的少なくて、ガチンコ勝負が多いじゃないですか。 クイックタイムみたいな時空系の術がないし、霧隠れとかセルフバーニングもないですし、 唯一あるのが魔法盾のガードビースト。あれはわざとですか?

術を使って間接的に強くすると言うのは、考えてなかったです。 術は何かに付与して使うものという考え方があの世界観の前提としてあったので、それを重視する…と言うのと もう一つ、これは技術的な問題なんですが、変な術って当然作るのが難しいんですよ。イリーガルだから。 だから早い段階で全部消しちゃったんです。

例えばセルフバーニングとかだと、ただ単純に魔法防御するだけだったら簡単なんだけど その時にカウンターして消えるとかいう指示をつけようとすると、途端にあちこち悪さしだすんですよ。 それを早い段階で避けたって言うのと、あとフロ1の時までのプログラマーが全部入れ替わっちゃったのもあります。

新しく一人来たんですが、その子と急遽打ち合わせて一年半で作らなきゃならないっていうので あんまり凝ったこともできなかった。だいぶ切ったところはありました。 フロ1まででそういう(凝った)事をやった部分では、たぶん例外なくバグに結びついていると思います。 そういう危険な処理ではあるんです。

きちんときっちりゲームを作るのであれば、本来そういう要素は入れないほうが良いんだけど 「バグがあっても(入れたい)」というのは何となく現場的に… まぁこれも、ある意味プレイヤーに甘えてるんだけど(苦笑)。

バグがあっても魔法はへんてこで、何が起こるかわからない強力さを持たせたい、 この世界に存在しないものなので…というのが常にどっかにありますから。 その、何が起こるかわからないという部分で、毎回冒険をさせてもらってる感じです。 バグるのはごめんなさい(笑)

ロマサガシリーズのあたりだと、思いついたものは全部放り込んだ感じです。 ロマ2で術がすごい強力なのは、最初に魔法がいかに「変」で強力なものかを示したかった僕の意向が入っています。 シャドウサーパントとか処理としてはかなり特殊ですが、当時はまだプログラマーが三人くらいはいたので 三人で頭を使いながらやってました。

フロ2はそういう点でシンプルなので、開発者が思いもつかないような変なプレイ、というのは やりづらくなってるかもしれません。

製作中って缶詰ですか?

んー…特にそういうことはないです。

僕は会社に泊まるのが大嫌いなので、何が何でも終電で帰って、その代わり翌日時間通りに出社しますよ。 ロマサガの頃は会社に泊まるとか、まだあったんですけど、自分でプログラムをやるようになると 徹夜寝不足ではデバックで余計辛い思いをするし、バグってうまく動かないとストレスもたまって良くないので まだもうちょっとやりたいと思ってもそこで打ち切った方がいい。

プログラマーは地獄の職業、というイメージとは違いますね。

ゲームの業界自体、あまりかっちりした事が好きじゃない人も結構いますね。 出社時間もルーズで良いとかなっちゃうと、どうしても夜遅くまで起きてたりとか… ゲームのプログラマーだと別ゲームにはまる人も多いです。

FF11のサービスが始まった時に、会社からやれやれと言われてみんなやったら、 ほんとにハマって会社来なくなっちゃったんですよ(笑)

Xさんご自身は、参考のために他ゲームをやったりとかはしますか?

やりますよ。僕は好きですから。 だから自分の好きなものしかゲームに現れてない、っていうのはあると思います。 ただ、あんまりとんがった方向に行っちゃうと誰もついてこれない事になっちゃうと思う。

食わず嫌いしてると面白いゲームにめぐり会えないので、歳を取っても間口はなるべく広く… 自分でやって面白くなかったらそれは面白くないんだと、そういう判断をするところまではやりたいと思ってます。 「ガールズモード」も、シミュレーションの後発、異端でしたけど売れ方が面白かったので買いましたよー(笑)